歯周組織再生療法

歯周組織再生療法Periodontal Tissue Regenerative Therapy

歯周組織再生療法の概要

歯周病の治療は大きく分けて、歯周基本治療と歯周外科治療があります。歯周基本治療は、全ての歯周病患者さんに対して行われる治療であり、歯周病の原因であるプラーク(細菌のかたまり)の徹底除去を行います。歯周病が軽度の場合はそれで改善することが多いですが、中等度から重度になると、深い歯周ポケットや複雑な骨欠損形態のため、歯周基本治療では改善しない可能性が高く、歯周外科治療が適応になります。

歯周外科治療は、歯ぐきを切開して、歯周基本治療では除去しきれなかった深在性のプラークを明視下で外科的に確実に除去する方法です。この際、歯周組織再生材料を併用・応用し、失われた歯周組織の再生を目的として行われるのが『歯周組織再生療法』です。

再生には時間がかかり、組織の欠損状態、患者さんの全身状態、歯磨きの状態、喫煙の有無、などによって向き不向きはありますが、うまくいけば歯の寿命を延ばせる可能性のある治療法です。

当院で行う歯周組織再生療法

1.精密な検査、診断、施術

歯周組織再生療法の手術を成功させるために重要なことは、術前に正確な診査を行い、歯周基本治療によって症状が安定しなかった病変が再生療法の適応症であるかどうかを見極めることです。そのため、従来のデンタルエックス線写真に加え、三次元的に骨欠損形態を把握するために、当院では必ず歯科用CTを撮影し、徹底的に分析し、綿密な治療計画を立案します。日本歯周病学会に所属し、歯周組織再生療法に関する様々な研修コースを受講済の院長が施術を行います。

2.様々な歯周組織再生材料

当院では、主に以下4つの材料を使用しております。どの材料も厚生労働省の承認を受けている安心・安全な材料です。

1)エムドゲイン®(ストローマンジャパン/ヨシダ)
歯の根に塗布して使用する歯周組織再生材料。ジェルに含まれるエナメルマトリックスタンパクの刺激により、歯を支える組織の細胞の再生が促進されます。2002年に厚生労働省の認可を受けており、約40か国で20年以上、200万人以上の患者に対する治療実績があり、副作用の報告も少なく、高い安全性が実証されています。保険適応外です。

2)リグロス®(科研製薬)
bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を用いた歯周組織再生医薬品。ジェル状で、欠損部を埋めるように充填します。血管新生能が高く、歯周組織再生促進作用に優れるため、近年地用が広まっています。2016年に発売された保険適応の薬剤です。

3)バイオオス®(Geistlich)
世界中で使用されている天然の骨補填材です。骨伝導能を有すし、予知性の高い骨再生を可能にします。バイオオスの粒子は、新生骨の足場となり、長期的な再生組織量を維持します。保険適応外です。

4)バイオガイド®(Geistlich)
口腔内組織再生用材料として実績のある純粋な天然コラーゲンメンブレンです。バイオオス。などの骨補填材と併用します。2層構造からなり、再生部位を保護し、軟組織の侵入を遮断するだけでなく、骨、軟組織、血管の新生・成長をサポートします。保険適応外です。 

3.治療後のアフターフォロー

歯周組織再生療法を行っても、毎日のケアを怠れば術部に細菌が付着し、炎症を起こしてしまいます。手術した歯を健康に保っていくためにも、治療当日から約2週間後の抜糸までは、数日おきにご来院をお願いしております。その後は1週間に1回、数週間に1回、1~2ヶ月に1度と間隔を伸ばしつつ、定期的に経過のチェックと歯のクリーニングをしていきます。結果がわかるのは、8~9カ月後。長い期間ですが、最大限の治療効果を期待するためには必要な過程ですので、ご協力をお願いしております。その後は約3~4ヶ月に1度、メンテナンスに通院をしていただいております。

歯周組織再生療法の流れ

患者さんの日々のセルフケア(ブラッシング、デンタルフロスと歯間ブラシの使用)の改善と、歯科医院での歯周基本治療で可能な限りプラークや歯石を取り除きます。治療前に比べると、ある程度炎症が治まっていて、歯ぐきの腫れが引いています。この段階になって初めて、歯周組織再生療法に進むことができます。

歯ぐきを切開して開き、歯根を露出させ、歯周基本治療では除去しきれなかった深在性のプラーク・歯石を明視下で外科的に徹底的に除去します。この後、再生材料が効果を発揮しやすいように歯根の表面を処理してから、エムドゲインやリグロスといった再生材料を塗布していきます。

歯ぐきを元の位置に戻して縫合します。再生材料を入れた部分にはほどなく血餅ができますが、この血餅が実はとても重要です。ただの血のかたまりではなく、歯周組織を再生する材料を豊富に含んだ大事な泉で、再生の足場となり、歯を支える組織に変化させていきます。血餅が保持されないと、骨や歯根膜などの内部の組織より、外の歯ぐきのみが再生されてしまい、深い歯周ポケットが残存したままになってしまいます。

再生材料の作用で、歯根膜の細胞が刺激されて、血餅が歯根膜やセメント質、歯槽骨に変化していきます。うまく再生できたか治療の結果がわかるのは8~9か月後。歯周病になる前の状態に元通りとはいきませんが、可能な限り現状回復を目指します。再生した歯槽骨は、2~3年かけて成熟していきます。

治療費用

リグロスを使用した治療 保険診療
(3割負担の場合、約17000~20000円)
エムドゲインと
骨補填剤(バイオオス)を
用いた治療
1~2歯 121000円(税込)
3歯以上 165000円(税込)
コラーゲンメンブレン
(バイオガイド)
33000~77000円(税込)
(費用は使用範囲による)

よくあるご質問

他院で抜歯が必要と言われました。再生療法を行えば、歯は残せるのでしょうか

残念ながら、どの患者さまにも歯周組織再生療法を行えるという訳ではありません。歯の状態だけでなく、歯磨きの状態、全身状態、喫煙習慣などによって、適応症がございます。

再生治療はどの程度、歯ぐきや骨(歯槽骨)が再生するのでしょうか。

再生治療が適応となる状態(ケース)では、歯ぐきの付着が回復するとともに、失った歯槽骨も9割〜半分程度回復することが期待できます。一般的には中等度の歯周病が対象となりますが、再生治療の適応となるケースが限られます。また、患者さんの年齢や体力、免疫力、御自身による歯磨きなどの努力により再生量は大きく左右されます。

再生療法で、どのくらい歯は長持ちしますか

具体的に何年とは申し上げられません。施術後、毎日のお家での適切なブラッシング、3ヶ月に1度の歯科医院での定期メインテナンス、そして禁煙など規則正しい生活習慣を整え維持すれば、今ある他の歯と同様に長持ちします。

治療期間はどれくらいかかりますか

治療がうまくいったかを最終確認するのは8~9カ月後になります。歯根膜とセメント質が再生しているかを検査、確認します。

再生療法に使用する材料は副作用はありますか?

副作用のほとんどない、安全性が確立されている材料を使用しています。厚生労働省の承認を受けた材料のみ使用しております。

手術時は痛みますか?

手術の際には麻酔を行うため、痛みを感じることはありません。しかし、手術後に麻酔が切れた後に痛みが出たり、腫れたりする場合があります。その場合は、抗生物質と鎮痛剤をお出ししますのでご安心ください。

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